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すらすら租税法研究ノート。

租税法に関する勉強と思考を書きます。

相互タクシー増資高額払込事件(福井地裁平成13年1月17日)

1.事実 納税者X(相互タクシー株式会社。同族会社、原告)は、平成5年12月、Xに対する借入金等で債務超過状態であった訴外B社 に対し、額面50円の株式を1株100万にて5万株余り引き受け、段階的に計529億円を払い込んだ(増資後もB社は債務超過状態のま…

租税判例百選評釈 №58 事前確定届出給与(東京地裁平成24年10月9日)

1.事実 工具製造を業とする株式会社X(納税者・原告、事業年度10月1日~9月30日)は、平成20年11月26日開催の定時株主総会で役員賞与を冬季・夏季それぞれ代表取締役Aに500万円、取締役Bに対し200万円と決議した。12月1日~9日にその役員に冬季賞与とし…

酒井克彦「レクチャー租税法解釈入門」レビュー。

酒井克彦教授の新しい著作、「レクチャー租税法解釈入門」を読み終わりましたので、少々レビューを。レクチャー租税法解釈入門作者: 酒井克彦出版社/メーカー: 弘文堂発売日: 2015/11/02メディア: 単行本この商品を含むブログを見る酒井克彦教授のテキストは…

新・独学者のための租税法研究入門。(その3 条文解釈編)

法律の学習は条文に始まり、条文に終わると聞きます。 租税法も法律学の一分野ですから、条文の重要性はいくら強調しても強調しすぎることはないはずなのですが・・税務(税金計算の技術。経理実務に近い税会計処理のこと)から入った方は、どうしても事例な…

新・独学者のための租税法研究入門。(その2 入門編)

大企業の経理部門に勤務して、10年とか税務を続けられているベテラン経理マンでも、法学としての租税法とは日々仕事をしている中ではほぼ、接することがありません。税務というのは、あくまで「税金計算の技術」のことであって、法律の解釈とかの世界とは別…

新・独学者のための租税法研究入門。(その1 導入編)

ちょっと学習が進みましたので、「新」シリーズです。いうまでもなく、租税法も法律学の一分野です。 税法学習を志す方は簿記検定や経理実務から入ってきた方々も多いため、法学の基礎的な素養がないために最初の取り掛かりに非常に苦労します。法学部出身で…

租税法と私法、予測可能性のお話。(その2)

今日の経済的取引は極めて複雑化しており、民法で定められた売買や賃貸借などの典型的な契約だけではなく、民法に定めが無い契約形式も合わせ、それらを組み合わせるなどしてほとんど無限に近い契約パターンが選択できる。 法人税法は、法人の所得を課税標準…

租税法と私法、予測可能性のお話。(その1)

課税は基本的に経済的取引に何らかの「担税力」を見出して行われる。経済的主体は、その取引にいかなる課税が行われるのか事前に知ることができなければ、取引を安心して行うことができない。経済的取引と私法、租税法はどのような関係にあるだろうか。以下…

「よくわかる税法入門」のおすすめ。

課税要件事実論に絡む難解な学説や、金融取引や組織再編を駆使した租税回避の判例研究で頭が痛くなったら、時にやさしい入門書を読み返して頭を整理します。今回読み返したのはこちら。よくわかる税法入門 第9版 (有斐閣選書)作者: 三木義一出版社/メーカー:…

租税法基本書の「使い分け」について。

租税法学習にあたり、私はこの3冊の基本書を使用しています。 まずは、言わずと知れた金子宏「租税法」です。 (法律学講座双書)" title="租税法 (法律学講座双書)">租税法 (法律学講座双書)作者: 金子宏出版社/メーカー: 弘文堂発売日: 2015/04/23メディア: …

外れ馬券は経費になるのか?~最高裁判決が出ました!~

「インターネットを通じて競馬ソフトを使って継続して馬券を購入していた場合、競馬の外れ馬券の購入代金について雑所得なのか、一時所得なのか。 「当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費となるのか」この問題については全国各地で裁判となり、世間の…

租税法研究雑誌のお勧めあれこれ。(その1)

ツイッターでお勧めの税務雑誌を教えて欲しいとのご質問を受けましたので、少々ご紹介したいと思います。 いろいろな雑誌が発行されておりますが、それぞれ特色がありまして目的により使い分けるとよいかと思います。 まずは、こちら「租税研究」。 公益社団…

研究ノート 保険医療にかかる控除対象外消費税について。

保険医療は消費税法上、社会政策上の配慮を理由として「非課税」とされている。 疾病という状況にある国民に税負担を求めるのは適切ではない、という立法者の政策判断によるものである。 しかし、保険医療を提供する医療機関は、消費税非課税の効果として自…

独学者のための租税法研究入門。(その10 学者紹介編④)

さて、第10回です。 今回は消費税法を専門に研究されている租税法学者を紹介いたします。 まずは、明治学院大学の西山由美教授。 西山由美 教授 | 明治学院大学 経済学部 西山由美教授はドイツ売上税(付加価値税)の研究からはじまり、日本の消費税法につい…

独学者のための租税法研究入門。(その9 税制調査会答申編)

どの学問分野でも基本的作法というものがあります。 議論を進める上で、共通の理解が前提として存在しないと、既に決着済みの論点を繰り返すことになったり、あるいは自己流で無理な解釈を示すことにもなりかねません。 今回は、政府税制調査会の答申、なか…

オンラインで無料で学べる税法入門。

「独学者のための租税法研究入門」は1回お休みしまして、「研究」に入る前に読むべき、無料でネットで学べる税法入門を紹介いたします。 やさしい税金教室-日本税理士会連合会 日本税理士連合会の「やさしい税金教室」「こんなときこんな税金」。毎年更新さ…

独学者のための租税法研究入門。(その8 番外①財政学編)

その8です。 「独学者のための租税法研究入門。」ですので、集めた税金を「使う方」はまた別の分野です。しかし、租税法を学ぶためには周辺知識も重要ですので、簡単な財政学及び経済学の知識があると重宝いたします。 財務省が毎年編集しているこちらで基…

独学者のための租税法研究入門。(その7 学者紹介編③)

その7です。 例の富岡幸雄名誉教授のトンデモ本で傷つけられている中央大学の名誉回復のために、今回は中央大学の優れた租税法学者を紹介いたします。 しかし、OBとはいえ、あんな錯乱した方がいたら嫌ですね。。 まだOBだから我慢できますが、同志社大学と…

独学者のための租税法研究入門。(その6 判例学習編)

第6回です。租税法研究にあたりまして、判例の学習は必須です。 大島訴訟(サラリーマン税金訴訟)など、租税法の合憲性にまで踏み込んだ重要な判決文は、繰り返し読み込んで司法の考え方を学びたいところです。 租税判例の学習書としてはいろいろ出ておりま…

独学者のための租税法研究入門。(その5 雑誌紹介編①)

その5です。 京都大学の租税法学者たちの紹介は少々、難しい本ばかりでしたので、今日は時事的な判例紹介などもある租税法の雑誌を紹介いたします。 租税研究 公益社団法人 日本租税研究協会|出版物 シャウプ勧告に基づいて設立された公益社団法人日本租税…

独学者のための租税法研究入門。(その4 学者紹介編②)

第4回です。学者紹介編で、前回は東京大学の金子宏名誉教授とそれにつらなる方々を紹介いたしましたが、今回は京都大学の清永敬二名誉教授、その弟子である岡村忠生教授、そのさらに弟子である租税法学者たちを紹介いたします。 岡村忠生京都大学教授の著作…

独学者のための租税法研究入門。(その3 論文検索編)

さて、第3回です。京都大学(出身)の租税法学者たちの紹介は次回にしまして、今回は租税法論文の検索方法を紹介したいと思います。 例えば、CiNii(サイニィと読みます)で論文を検索しようとしても、漠然としたキーワード(交際費・寄附金・移転価格税制・…

独学者のための租税法研究入門。(その2 学者紹介編①)

第2回です。租税法学者といえば金子宏名誉教授くらいしか存じ上げておりませんでしたが、世の中にはたくさんの租税法研究者がいらっしゃいます。 何人かご紹介したいと思います。あくまで私が勉強した範囲の中ですので、独断と偏向が混じっているかもしれな…

独学者のための租税法研究入門。(その1 導入編)

試行錯誤して回り道をしてしまった自分の轍を踏んで欲しくないので、どれだけニーズがあるかわかりませんが、「独学者のための租税法研究入門」を書いてみます。 なお、「租税法研究入門」であり、税金計算の実務=税務の入門ではありません。こちらを読んで…

経済的実態に変更が無い、とは?(繰越欠損金引継について)

繰越欠損金は、原則として発生させた(赤字を計上した)法人のみが使用できるものであり、他の法人へ売却したり、移転させたりすることはできません。 しかし、平成13年にはじまった組織再編税制により、一定の条件(支配関係・みなし共同事業要件。税制適格…

租税法入門=簡単というわけではありません。

本日のお題はこちら。租税法入門 (法学教室ライブラリィ)作者: 増井良啓出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2014/03/28メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る世に「入門」と銘打った初学者向けの易しい本はあふれております。 本…

「不公正」を許さないためには?

日本の税法体系では、租税回避行為を否認するためには明文の法律の規定が必要であるとされます。 「○○については、損金に算入しない。」という規定(個別否認規定)が存在しなければ、納税者の行為が社会的に不公正だ、と感じられても否認できないというもの…

読書ノート 水野忠恒「租税法 第5版」その2。

続きです。租税法 第5版作者: 水野忠恒出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2011/04/28メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログを見る「必要経費の規定が存在しない限り、粗収入や総所得に対する課税はむしろ消費課税に近づく・・所得税として位置付…

読書ノート 三木義一「中小企業特例と前段階税額控除について」

本日のお題はこちら。 三木義一「中小企業特例と前段階税額控除について」現代税法と人権作者: 三木義一出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 1992/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「付加価値税をすでに実施している国々において、なお検討課題と…

読書ノート「欧州委員会、金融保険取引と付加価値税について」。

本日のお題はこちらから。欧州付加価値税ハンドブック―27カ国のVAT税制と実務問題作者: 天野史子,税理士法人プライスウォーターハウスクーパース出版社/メーカー: 中央経済社発売日: 2009/09メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログを見るこちら…

読書ノート 西山由美「VATの最新動向と課題」。

本日のお題はこちら。 西山由美「VATの最新動向と課題」税務弘報 2012年 07月号 [雑誌]出版社/メーカー: 中央経済社発売日: 2012/06/05メディア: 雑誌購入: 2人 クリック: 19回この商品を含むブログ (1件) を見るこちらに収録されています。消費課税をめぐる…

読書ノート 國枝繁樹「金融危機後の金融関連税制」。

本日のお題はこちら。証券税制改革の論点作者: 証券税制研究会出版社/メーカー: 日本証券経済研究所発売日: 2012/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見る今般の金融危機で、各国政府は金融システムの安定化のために巨額の財政資金投入を余儀なくされ…

読書ノート水野忠恒「消費税の制度と理論」。

本日のお題はこちら。消費税の制度と理論 (租税法研究双書)作者: 水野忠恒出版社/メーカー: 弘文堂発売日: 1989/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「金融仲介サービスも、資本及び労働を必要としておりそこには付加価値が生じるのである・・金融…

読書ノート 市澤正昌「金融機関に対する付加価値税の検討」

本日のお題はこちら。本日のお題はこちらでした。市澤正昌「金融機関に対する付加価値税の検討」http://t.co/V6nCodsROy— すらたろう (@sura_taro) 2014, 3月 23「金融機関は多額の付加価値を生産しているにも関わらず、消費税納税額は過少化され他産業との…

読書ノート「タックスシェルター」。

本日のお題はこちら。タックスシェルター作者: 中里実出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2002/07メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (1件) を見る「企業において付加価値が生み出されていないにもかかわらず、いわば付加価値以外の異物を消費…

読書ノート「現代ドイツの売上税(付加価値税)の改革をめぐって : 軽減税率の機能と廃止案の検討を中心に」

ドイツでは売上税(付加価値税)の軽減税率の廃止議論が起きているそうです— すらたろう (@sura_taro) 2014, 3月 9 ドイツ売上税は、標準税率は19%ですが、食料品などに7%の軽減税率が適用されています。これを廃止したうえで、標準税率を16%に引き下げし…

読書ノート「金融取引の課税問題」。

本日のお題はこちら。金融取引の課税問題 (租税法研究 (第24号))作者: 租税法学会出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 1996/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見る少々、古いですが・・「金融仲介機関が利用者から徴収する『対価』は、金融サービスの対…

読書ノート 岡村他「ベーシック税法」その2。

続きます。ベーシック税法 第7版 (有斐閣アルマ)作者: 岡村忠生,渡辺徹也,高橋祐介出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2013/04/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る話のつかみとして、王様ミクロからの引用を掲示いたします。ミクロ…

読書ノート 岡村他「ベーシック税法」その1

本日のお題はこちら。ベーシック税法 第7版 (有斐閣アルマ)作者: 岡村忠生,渡辺徹也,高橋祐介出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2013/04/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る租税回避の定義(通説)。①税法上、通常選択されるであろ…

読書ノート水野「租税法」その1。

本日の読書ノートはこちら。租税法 第5版作者: 水野忠恒出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2011/04/28メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログを見る「間接税が消費者が負担するという限り、物品をその消費地において課税するのは当然であり、その…

読書ノート「租税実体法」その1。

本日のノート題材はこちら。新版 租税実体法―法人税法解釈の基本原理作者: 松沢智出版社/メーカー: 中央経済社発売日: 2003/08メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「資産の値上がりによってその資産の所有者に帰属する増加益を所得として観念するの…

読書ノート 自由民主党税制調査会「早わかり税制改正一問一答」

金融取引を消費税非課税とする理由。まずは「消費=お金を払って財貨やサービスを得る行為」と定義付け(P156~)— すらたろう (@sura_taro) 2014, 2月 23 「金利を払って借金をする場合・・・お金を払って借金というお金を得る行為であり、財やサービスを得…

読書ノート「消費税はエスカレートする」

本日のお題はこちら。 消費税はエスカレートする (岩波ブックレット)作者: 北野弘久出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1989/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 「直接税の場合には、税法上は納税義務者と担税者とが一致することが予定されて…

文献調査「消費税制度成立の沿革」(その1)

最近、経済学ネタばかりで租税法がお留守になっておりましたが、 私の本業はやはりこちらです。 本日のお題はこちら。 消費税制度成立の沿革出版社/メーカー: ぎょうせい発売日: 1993/06メディア: 単行本この商品を含むブログを見る大平内閣の「一般消費税」…

所得税の空洞化を考える。

日本の所得税が抱えている問題点として次の3つが指摘されます。 ①所得控除が大きく、低中所得者のみならず、高所得者の税負担も大幅に軽減されている。 ②ほとんどの世帯において、社会保険料の負担は所得税に比べて大きい。 ③年金世帯の税と社会保険料負担は…

金融機関と信頼。

倫理や公正という概念は曖昧なもので、 一人ひとり、その基準は異なるのではないかと考えられます。今般の金融危機対応に限らず、 金融市場や金融機関に対する規制や公共政策が 保護主義の立場に立って過度の規制や 誤った規制を生み出してきた歴史がありま…

資本を保護せよ。

資本は、利潤を生み出す「元手」であり、無くならない限り再投資されて次々と新しい利潤をもたらしてくれます。 一方、同じ生産要素である「労働」は一日の仕事で疲れ果てても、食事をして休息して睡眠を取れば、再び活動できるようになります。第二次大戦後…

部分的な中立性に価値はあるか?

課税自体は民間から政府への所得移転に過ぎず、何ら新しい価値を生み出すものではありません。 課税による機会コストは、課税がなければ創出されていただろう付加価値を損なう逸失利益(超過負担)のことになります。租税原則「公平・中立・簡素」のうち、中…

消費税法文献・論文サーベイ(その1)

東海大学の西山由美教授は消費税に関する興味深い論文をたくさん執筆されています。 必読です。消費税の中長期的論点 : EU付加価値税からの示唆東海法学 39, 107-118, 2007消費課税における競争中立性--「ガストン・シュール事件」を素材として税法学 (540),…

外形標準課税と消費税の差異、税等価。

外形標準課税(法人事業税)と消費税は、地方税と国税という差異の他、税額計算過程にも大きな違いがあり、別々のものだと思われています。 もっとも大きな違いは、外形標準課税は資本金1億円超の大きい企業のみに課税される「直接税」であるのに対し、消費…