転嫁の周知と国民的理解。
「間接税」とは、立法者により転嫁が予定されている税金ではありますが、実際に転嫁を行えるかどうかは、取引における力関係によります。
主税局長・国税庁長官・大蔵事務次官を歴任した尾崎護氏も、売上税法案廃案後に書いたエッセイ風の「売上税独り語り」で、素直にそのことを認めております。
取引段階を経るごとに課税が累積していく「取引高税」への反省から生まれた欧州付加価値税では、「転嫁できない」というのは想定外のようです。*1
尾崎氏は、売上税の法の条文中でも、「転嫁するものとする」という条文をおくべきだったか、あるいは国民への周知徹底を行うべきであったと語っています。
現行の消費税でも、「転嫁」を保証するような条文はありませんが、消費税法国会提出から実際の施行までのあいだには、相当の周知徹底活動が大蔵省主導で行われています。
さて、今回の税率引き上げでも、公正取引委員会までも巻き込んで、「適正な転嫁」の指導活動が行われております。
国民は、馴染んでいくでしょうか。
「売上税独り語り」はこちら。
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また、消費税法施行前後の当局の活動はこちらでわかります。
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*1:なお、欧州付加価値税がインボイス方式なので転嫁がスムーズに行く、というのは多分に日本の帳簿方式への疑問からくる先入観ではないか、と考えております。