すらすら租税法研究ノート。

租税法に関する勉強と思考を書きます。

払う時に課税する?

我が国の現行の所得税法は、一時的な所得などにも課税する「包括的所得概念」に立脚していると解説されています。*1

包括的所得概念への経済学的な立場からの批判として、次のようなものがあげられます。
①勤労所得への非中立性
②貯蓄・投資への二重課税による非中立性

包括的所得概念による従来の所得税に対し、「実際に消費に充てられた金額のみを課税の対象として限定」する、消費支出税が提案されてきました。
消費支出税は、1950年代に英国の財政学者カルドアの提案により、セイロン(現スリランカ)で導入されましたが、個人の支出を把握することが事務的に不可能であったため、ごく短期間で廃止に追い込まれております。

しかし、上記①②から経済学者たちには支出消費税は魅力的と思われ、米国の州レベル、あるいは連邦税としても度々、提案がなされているとも聞きます。

日本では、「消費税」には感情的な反発が強く、どのような租税体系を組み立てれば社会の経済厚生を最も高めることができるのか、という視点からの議論が欠落しているように感じられます。

*1:金融所得に対する源泉分離課税など、北欧の二元的所得税に近づきつつあるのではないかという意見も見かけていますが、この辺りはもう少し勉強いたします。