すらすら租税法研究ノート。

租税法に関する勉強と思考を書きます。

実感としての消費者課税と、実態としての企業課税。

消費税は、買い物をした消費者から、国に納付するまでの「預り金」的性格を持つ、と納税当局から説明されることもあります。
しかし、消費税法の条文では消費者から「税額相当」を必ず預かるものとする、とは規定されていませんし、企業会計上で「預り金」経理をすることも義務付けられてはいません。

また、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者は、簡易課税を選択できますが、これは技術的に売上額の一定率を掛けた金額を納付するというものに近く、金子宏「租税法」でも、「簡易課税を適用される限りで、取引高税の要素を持っている」と説明されています。

一方、消費者の実感としては、事業者に「消費税相当額」を預けているという感覚を持っていることが多いのではないかと思われます。
また、消費税相当額が正しく国庫へ納付されず、事業者の手元に残っているのではないか、という益税の疑念もあり、消費税への不信感がただよっているのではないかと。

私が考えるに、消費税は「間接税」という区分や前段階税額控除の建前もありつつも、実態としては企業課税であり、法人税と同じように不透明な形で企業をめぐる利害関係者へ転嫁されているのではないか、と。

この実態と実感のすれ違いが、我が国における消費税への不信感蔓延の原因ではないでしょうか。