小売売上税の米国における普及要因。
取引のあらゆる段階に課税されるものの、前段階税額控除により課税が累積しない特徴を持つ付加価値税は、広く世界に普及しており、日本の消費税もその一種であります。
OECD諸国のうち、唯一の例外として全国(連邦)レベルで付加価値税の仕組みを採用していないのは米国のみ。
その代わり、米国では小売レベルでの売上税が州政府によって採用されています。小売売上税では、付加価値税とは異なり、最終消費者への販売時にのみ課税され、製造・卸売段階では課税されません。
小売売上税は、低い税率で多額の税収を上げることができるものの、次のような重要な欠点があります。
①帳簿記帳が充分ではない零細商店などで課税の逸脱が起こり易い。
②行政コスト(徴税コスト)が高い。
このような欠点にもかかわらず、米国で小売売上税が広く普及しているのは、下記のような理由が考えられます。
①比較的大規模な小売業者に、小売売上の大部分が集中されている。
②小売業者の帳簿記帳水準が高い。
③小売の仕入れが大部分、卸売業者・製造業者から行われており、自家製作販売が少ない(=脱税しにくい)。
④州政府のような広域地方政府で行っており、規模の経済が働いている。
また、小売売上税は消費税と同じく逆進性が強いのですが、一定額までの税額控除など緩和策もあるとも。
米国でも欧州型付加価値税の導入がしばしば提言されていますが、大きな政府を嫌う心情(付加価値税は巨額の税収をもたらし、政府の肥大化を誘発しかねないという発想)もあり、受け入れていないとも。
唯一、付加価値税をもたない米国との比較は、輸出免税の仕組みによる輸出競争力の問題など、興味深い論点が山盛りです。
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