すらすら租税法研究ノート。

租税法に関する勉強と思考を書きます。

経済的実態に変更が無い、とは?(繰越欠損金引継について)

繰越欠損金は、原則として発生させた(赤字を計上した)法人のみが使用できるものであり、他の法人へ売却したり、移転させたりすることはできません。
しかし、平成13年にはじまった組織再編税制により、一定の条件(支配関係・みなし共同事業要件。税制適格要件)がある場合は別の法人へ「引き継ぐ」ことができるようになりました。

非常な高収益の企業Xにとっては、多額の税務上の繰越欠損金を有する会社Yは、事業上の価値・必要性がたとえまったくない場合でも、自己(X)の課税所得を圧縮する「手段」として独自の価値を持つ

太田洋「M&A法大全」、商事法務、2001年、P419

適格組織再編においては繰越欠損金の引継が認められるのは、「再編前の法人の資産に対する支配が継続しているから」「株主の投資が継続しているから」「事業が継続しているから」などと説明されます。
この3つのの説明を包括しているのは「経済的実態に変更がないから」とされます。


動きの速い今日においては、欠損金が計上された事業年度の事業内容と、それが繰り越される事業年度における事業はもはやまったく別物であることも考えられます。
それが同一の法人格の内部で営まれている事業であるとしても、であります。
まして、事業は自由に開始したり廃止したりできますし、別の法人から買い入れることも可能です。


ではなぜ、欠損金が繰り越されたり、組織再編成で他の法人へ引き継がれていくのでしょうか。
ヤフー事件東京地裁判決を機会に、いろいろ考えております。


続きます。


本日の参考文献はこちら。

M&A法大全

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会社合併の税務

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