すらすら租税法研究ノート。

租税法に関する勉強と思考を書きます。

所得税の空洞化を考える。

日本の所得税が抱えている問題点として次の3つが指摘されます。


①所得控除が大きく、低中所得者のみならず、高所得者の税負担も大幅に軽減されている。
②ほとんどの世帯において、社会保険料の負担は所得税に比べて大きい。
③年金世帯の税と社会保険料負担は、給与所得者に比べてはるかに低い。


超過累進課税の建前により、高所得者層の税率はそれなりに高いのですが、各種の、重複しているとも言える所得控除があり、実際の負担は諸外国に比べ低くなっております。


また、所得比例の健康保険料や年金保険料により給与所得者層の社会保険料は重く、それに加え、低所得者層でも国民健康保険料や国民年金保険料は定額の部分もあり、無保険者や未納の問題も深刻になっております(社会保険料の逆進性)。


一方、年金受給者層は手厚い公的年金控除でほぼ所得税がかかっておらず、年金保険料はもちろんありませんし健康保険もやすい。


また、税制の問題からは離れますが、現役給与所得者層も非正規社員化・周辺正社員化が進んでおり、所得の絶対額が減少していることも相まって、所得税の空洞化が進行しております。


今般の税と社会保障の一体改革法では、この所得税空洞化の問題にはほぼ未着手で、消費税率引き上げだけが先行してしまい、また社会保障給付の高齢層への著しい偏在も政治的に困難なのか、手がつけられておりません。


社会保障制度を論じるのは私の手には余るのですが、一有権者としてこれからの動きを注視したいと思います。

本日の参考文献はこちら。

日本の税をどう見直すか (シリーズ・現代経済研究)

日本の税をどう見直すか (シリーズ・現代経済研究)