新・独学者のための租税法研究入門。(その2 入門編)
大企業の経理部門に勤務して、10年とか税務を続けられているベテラン経理マンでも、法学としての租税法とは日々仕事をしている中ではほぼ、接することがありません。
税務というのは、あくまで「税金計算の技術」のことであって、法律の解釈とかの世界とは別物ですからね。
さて、導入編に続きまして「入門」編です。
「租税法入門の壁」を超えるためには、租税法律主義、租税公平主義、包括所得概念、租税法と私法の関係、借用概念、租税回避といった基本的な学問分野の概念を理解したり、大島訴訟など重要な最高裁判例も知っておかなければなりません。
いくら、税務に詳しい=個別計算規定に精通していても、上記のような学問分野特有の概念を知らなければ、ほぼ無限に増えていく計算規定をひたすら意味もわからずまる覚えし続けることになります。
もちろん、これでも実務としての税務はこなせます。
税務の学習は、事例集や質疑応答事例のような実務書や、通達の逐条解説を読むことと、自社で発生する事例を当てていけばほぼじゅうぶんですからね。
税務に詳しい、と自信をもって租税法の世界に入ってきた方が、壁に当たってしまうのがこの辺りの差異ではないではないかと。
上記のような「学問としての租税法特有の概念」を学ぶために、お勧めしたいのはこちら。
①中里実編「租税法概説」第2版
- 作者: 中里実,弘中聡浩,渕圭吾,伊藤剛志,吉村政穂
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2015/04/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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特色として、法と経済学の視点が入っていること(取引法としての租税法)、近年、非常に重要性が高まっている国際課税についても詳しく記述されていることが挙げられます。
第2版としてアップデートされましたので、新しい裁判例も取り込みされています。
②酒井克彦「ステップアップ租税法」
- 作者: 酒井克彦
- 出版社/メーカー: 財経詳報社
- 発売日: 2010/08
- メディア: 単行本
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ただ、これを1冊目に手に取ってしまうと難しくて理解不能になりますので、導入編と①の租税法概説の後に読むとよいでしょう。
酒井先生はこの本は「租税法の基礎」と書かれています。最初は難しく感じられるかもしれませんが、取り上げられている概念も判例もまさに基礎レベル。
ただし、基礎=易しいではありませんので・・
続きます。