すらすら租税法研究ノート。

租税法に関する勉強と思考を書きます。

2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

消費税法文献・論文サーベイ(その1)

東海大学の西山由美教授は消費税に関する興味深い論文をたくさん執筆されています。 必読です。消費税の中長期的論点 : EU付加価値税からの示唆東海法学 39, 107-118, 2007消費課税における競争中立性--「ガストン・シュール事件」を素材として税法学 (540),…

外形標準課税と消費税の差異、税等価。

外形標準課税(法人事業税)と消費税は、地方税と国税という差異の他、税額計算過程にも大きな違いがあり、別々のものだと思われています。 もっとも大きな違いは、外形標準課税は資本金1億円超の大きい企業のみに課税される「直接税」であるのに対し、消費…

取引高税の興亡。

製造→卸売→小売と、商品が流通するたびに課税され、しかも今日の付加価値税(消費税)のように前段階税額控除がなく、課税が累積していく(tax on tax)、「取引高税」についてです。取引高税は、第一次世界大戦の戦費を賄うために創設され、欧州で広く使わ…

小売売上税の米国における普及要因。

取引のあらゆる段階に課税されるものの、前段階税額控除により課税が累積しない特徴を持つ付加価値税は、広く世界に普及しており、日本の消費税もその一種であります。 OECD諸国のうち、唯一の例外として全国(連邦)レベルで付加価値税の仕組みを採用し…

納税の法的義務とその帰着。

法人企業は、法律上の税支払い義務はあっても、最終的に負担する主体にはなり得ません。法人課税は、一般に生産要素(労働・資本・・)所有者あるいは生産物購入者(消費者など)へ税の転嫁をもたらすことになります。 どの主体により多くの税の負担が帰着す…

消費税は付加価値税ではない?

付加価値税は実は付加価値に対する税ではない、と。租税図書館にもないので、国会図書館へ依頼するか。うーむ手間がかかるなあ。中村一雄(1971),付加価値税の分析視点,神戸大學經濟學研究年報,18巻,pp.84-111しかし、1971年の論文ですよ。 他で引用され…

実感としての消費者課税と、実態としての企業課税。

消費税は、買い物をした消費者から、国に納付するまでの「預り金」的性格を持つ、と納税当局から説明されることもあります。 しかし、消費税法の条文では消費者から「税額相当」を必ず預かるものとする、とは規定されていませんし、企業会計上で「預り金」経…

払う時に課税する?

我が国の現行の所得税法は、一時的な所得などにも課税する「包括的所得概念」に立脚していると解説されています。*1包括的所得概念への経済学的な立場からの批判として、次のようなものがあげられます。 ①勤労所得への非中立性 ②貯蓄・投資への二重課税によ…

転嫁の周知と国民的理解。

「間接税」とは、立法者により転嫁が予定されている税金ではありますが、実際に転嫁を行えるかどうかは、取引における力関係によります。 主税局長・国税庁長官・大蔵事務次官を歴任した尾崎護氏も、売上税法案廃案後に書いたエッセイ風の「売上税独り語り」…

金融仲介業への付加価値税課税の可能性。(思考中)

銀行業に代表される金融仲介業が生み出す審査・モニタリング・金融サービスなどの付加価値は、「金利」の中におり込まれてしまい、明示されません。 そのため、GDPの計算においても測定されてきませんでした。日本における金融仲介業が生み出す「付加価値」…

銀行業と消費課税。(その3)

Taxation Of Financial Intermediation : Theory And Practice For Emerging Economiesこの文献中には、1995年〜96年に欧州の金融機関10社の協力で行われたTCA(税額計算勘定)付キャッシュ・フロー税のパイロットテストについて書かれているそうです。 …

ネットで無料で読める租税法論文。(海外編)

National Tax Journalは発刊後2年を経過したものは登録無しで全部、無料で読めるようです。有難や〜 Howell H. Zee,A New Approach to Taxing Financial Intermediation Services Under a Value–Added Tax,2005 金融機関に対するリバースチャージ法による付…

非居住者、あるいは国外への波及?

消費税は内国税であり、その課税対象は「国内において行われた」ものに限られます。 当然、資産の譲渡等(役務提供も含む法令上の表現)の相手が「誰」であるかは無関係であり、販売・サービスした相手が日本人(居住者)及び内国法人に限定されるものではな…

個別消費税と一般消費税。

酒税・たばこ税・ガソリン税、あるいは廃止された物品税など、 個別消費税を財政学の視点から支える論点は、3つあります。①贅沢品に対する重課。 垂直的公平(負担能力がある者には重く税を課する)という視点から、贅沢品に対する重課が正当化されます。 …

なぜ法人に課税する?

法人は、法律が作り出したものであります。 これが実在しているのか、 それとも個人の集合体に過ぎないのか、 租税法の世界でも延々と論争が続いてきたそうです。現実の法人税法は、個人の集合体であるという建前を とりつつ、実在説も加味しているのではな…