すらすら租税法研究ノート。

租税法に関する勉強と思考を書きます。

取引高税の興亡。

製造→卸売→小売と、商品が流通するたびに課税され、しかも今日の付加価値税(消費税)のように前段階税額控除がなく、課税が累積していく(tax on tax)、「取引高税」についてです。

取引高税は、第一次世界大戦の戦費を賄うために創設され、欧州で広く使われました。
取引高税には、以下のような長所・短所があります。

長所
①同じ税率で最大の税収をもたらすこと。
②単一段階売上税と比較すると、課税の衝撃を特定段階の企業に集中せず、すべての段階の企業に分散できること。
③税務行政上の取扱が単純

短所
①取引段階が多いほど、課税が累積し商品に占める税負担の比率が高くなる。
②このため、企業の垂直的統合を促進してしまう
③国境税調整が困難。

短所③(国境税調整)について、シャウプ博士は次のように述べています。
「輸出されるある財貨について、どれほど取引高税が含まれているかを正確に把握することは、租税が完全に前転する*1という非現実的な仮定を置いたとしても不可能」*2

この他、業界ごとの非課税・免税、軽減税率などにより取引高税は複雑怪奇な税制となってしまい、デンマーク・フランスで導入されたのを皮切りに、今日のような前段階税額控除を特色とする付加価値税へ切り替えられていきました。

欧州では、このような歴史を持っていましたが、日本では消費税は異なる誕生の仕方をします。

これは次回。

*1:引用者注:流通の下流方向へ税額を転嫁することを指しています。

*2:「財政学」第1巻、301ページ。