すらすら租税法研究ノート。

租税法に関する勉強と思考を書きます。

思考メモ

部分的な中立性に価値はあるか?

課税自体は民間から政府への所得移転に過ぎず、何ら新しい価値を生み出すものではありません。 課税による機会コストは、課税がなければ創出されていただろう付加価値を損なう逸失利益(超過負担)のことになります。租税原則「公平・中立・簡素」のうち、中…

外形標準課税と消費税の差異、税等価。

外形標準課税(法人事業税)と消費税は、地方税と国税という差異の他、税額計算過程にも大きな違いがあり、別々のものだと思われています。 もっとも大きな違いは、外形標準課税は資本金1億円超の大きい企業のみに課税される「直接税」であるのに対し、消費…

実感としての消費者課税と、実態としての企業課税。

消費税は、買い物をした消費者から、国に納付するまでの「預り金」的性格を持つ、と納税当局から説明されることもあります。 しかし、消費税法の条文では消費者から「税額相当」を必ず預かるものとする、とは規定されていませんし、企業会計上で「預り金」経…

払う時に課税する?

我が国の現行の所得税法は、一時的な所得などにも課税する「包括的所得概念」に立脚していると解説されています。*1包括的所得概念への経済学的な立場からの批判として、次のようなものがあげられます。 ①勤労所得への非中立性 ②貯蓄・投資への二重課税によ…

なぜ法人に課税する?

法人は、法律が作り出したものであります。 これが実在しているのか、 それとも個人の集合体に過ぎないのか、 租税法の世界でも延々と論争が続いてきたそうです。現実の法人税法は、個人の集合体であるという建前を とりつつ、実在説も加味しているのではな…

数量化できない課税物件には。

財務会計のテキストの最初の方で、 会計公準というのが出てきます。 その中で、貨幣的測定の公準、というのがあります。 いろいろな意味がありますが、 お金で測れないものは財務会計には取り込めない、 というものも含まれますね。さて、租税法の世界では「…

外形標準課税と消費税は二重課税では?

我が国の消費税は、欧州VATに類似した付加価値税であるといわれます。 消費税法の仕入税額控除の仕組みを分解しますと、 このような式で表されます。課税標準=売上額-原材料仕入額‐資本財購入額 税額=課税標準×5%(地方消費税含む)一方、地方税である法…

つぎはぎ改正が引き起こす会計税務の差異とは。

今日の財務会計は、言うまでもなく発生主義会計により行われています。 現金の入金がなくとも、「実現」したものであれば収益に計上する、という実務慣行ですね。さて、日本の会計基準には収益認識に関する包括的な基準がなく、その「実現」基準として法人税…

どの国で付加価値税を課税する?

国際的二重課税の排除、といいますと 外国税額控除制度や、租税条約、 または転じて移転価格税制・過少資本税制などが 思い浮かびます。しかし、付加価値税の世界でも 国際的二重課税の排除が行われています。 それを担保するのが輸出免税制度です。輸出免税…

信頼の対象となる公的見解?

税務署に聞きに行って、そのとおりに処理したのに 後から税務調査で否認されたり、 追徴課税されたり・・ということはよくあると聞きます。最高裁判決は、納税者が救済される場合として 次のようなものを示しています。①税務官庁が納税者に対して信頼の対象…

租税回避否認の論理には。

私法の世界では、 「私的自治の原則」と「契約自由の原則」が 前提として置かれています。租税法は強制力を持った「徴税」という、 国家権力と私人の交差する場面を律していますが。私的自治と契約自由を重視しますと、 課税要件を回避するために 経済効果は…

いちいち裁判にはできませんし・・

本日の1冊はこちらです。 税法入門 第6版 (有斐閣新書)作者: 金子宏,清永敬次,宮谷俊胤,畠山武道出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2007/04/09メディア: 新書購入: 2人 クリック: 4回この商品を含むブログ (11件) を見る 55頁より。 公平負担の原則は常に立法…

応益的負担とは?

本日はこちら。 租税法ではなく、財政学のテキストです。 現代財政学 (有斐閣アルマ)作者: 横山彰,堀場勇夫,馬場義久出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2009/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る この中から、地方税…

一般に公正妥当と認められる会計処理の基準、って?

さて、本日の題材は中井稔教授の「企業課税の事例研究」です。 企業課税の事例研究作者: 中井稔出版社/メーカー: 税務経理協会発売日: 2010/03メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 中井教授は元日本興業銀行の経理部長を務めた方。 あの有名な貸倒損…