すらすら租税法研究ノート。

租税法に関する勉強と思考を書きます。

読書ノート 西山由美「VATの最新動向と課題」。

本日のお題はこちら。 西山由美「VATの最新動向と課題」税務弘報 2012年 07月号 [雑誌]出版社/メーカー: 中央経済社発売日: 2012/06/05メディア: 雑誌購入: 2人 クリック: 19回この商品を含むブログ (1件) を見るこちらに収録されています。消費課税をめぐる…

読書ノート 國枝繁樹「金融危機後の金融関連税制」。

本日のお題はこちら。証券税制改革の論点作者: 証券税制研究会出版社/メーカー: 日本証券経済研究所発売日: 2012/09メディア: 単行本この商品を含むブログを見る今般の金融危機で、各国政府は金融システムの安定化のために巨額の財政資金投入を余儀なくされ…

読書ノート水野忠恒「消費税の制度と理論」。

本日のお題はこちら。消費税の制度と理論 (租税法研究双書)作者: 水野忠恒出版社/メーカー: 弘文堂発売日: 1989/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「金融仲介サービスも、資本及び労働を必要としておりそこには付加価値が生じるのである・・金融…

読書ノート 市澤正昌「金融機関に対する付加価値税の検討」

本日のお題はこちら。本日のお題はこちらでした。市澤正昌「金融機関に対する付加価値税の検討」http://t.co/V6nCodsROy— すらたろう (@sura_taro) 2014, 3月 23「金融機関は多額の付加価値を生産しているにも関わらず、消費税納税額は過少化され他産業との…

読書ノート「タックスシェルター」。

本日のお題はこちら。タックスシェルター作者: 中里実出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2002/07メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (1件) を見る「企業において付加価値が生み出されていないにもかかわらず、いわば付加価値以外の異物を消費…

読書ノート「現代ドイツの売上税(付加価値税)の改革をめぐって : 軽減税率の機能と廃止案の検討を中心に」

ドイツでは売上税(付加価値税)の軽減税率の廃止議論が起きているそうです— すらたろう (@sura_taro) 2014, 3月 9 ドイツ売上税は、標準税率は19%ですが、食料品などに7%の軽減税率が適用されています。これを廃止したうえで、標準税率を16%に引き下げし…

読書ノート「金融取引の課税問題」。

本日のお題はこちら。金融取引の課税問題 (租税法研究 (第24号))作者: 租税法学会出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 1996/10メディア: 単行本この商品を含むブログを見る少々、古いですが・・「金融仲介機関が利用者から徴収する『対価』は、金融サービスの対…

読書ノート 岡村他「ベーシック税法」その2。

続きます。ベーシック税法 第7版 (有斐閣アルマ)作者: 岡村忠生,渡辺徹也,高橋祐介出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2013/04/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る話のつかみとして、王様ミクロからの引用を掲示いたします。ミクロ…

読書ノート 岡村他「ベーシック税法」その1

本日のお題はこちら。ベーシック税法 第7版 (有斐閣アルマ)作者: 岡村忠生,渡辺徹也,高橋祐介出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2013/04/15メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る租税回避の定義(通説)。①税法上、通常選択されるであろ…

読書ノート水野「租税法」その1。

本日の読書ノートはこちら。租税法 第5版作者: 水野忠恒出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2011/04/28メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログを見る「間接税が消費者が負担するという限り、物品をその消費地において課税するのは当然であり、その…

読書ノート「租税実体法」その1。

本日のノート題材はこちら。新版 租税実体法―法人税法解釈の基本原理作者: 松沢智出版社/メーカー: 中央経済社発売日: 2003/08メディア: 単行本この商品を含むブログを見る「資産の値上がりによってその資産の所有者に帰属する増加益を所得として観念するの…

読書ノート 自由民主党税制調査会「早わかり税制改正一問一答」

金融取引を消費税非課税とする理由。まずは「消費=お金を払って財貨やサービスを得る行為」と定義付け(P156~)— すらたろう (@sura_taro) 2014, 2月 23 「金利を払って借金をする場合・・・お金を払って借金というお金を得る行為であり、財やサービスを得…

読書ノート「消費税はエスカレートする」

本日のお題はこちら。 消費税はエスカレートする (岩波ブックレット)作者: 北野弘久出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1989/06/20メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 「直接税の場合には、税法上は納税義務者と担税者とが一致することが予定されて…

文献調査「消費税制度成立の沿革」(その1)

最近、経済学ネタばかりで租税法がお留守になっておりましたが、 私の本業はやはりこちらです。 本日のお題はこちら。 消費税制度成立の沿革出版社/メーカー: ぎょうせい発売日: 1993/06メディア: 単行本この商品を含むブログを見る大平内閣の「一般消費税」…

所得税の空洞化を考える。

日本の所得税が抱えている問題点として次の3つが指摘されます。 ①所得控除が大きく、低中所得者のみならず、高所得者の税負担も大幅に軽減されている。 ②ほとんどの世帯において、社会保険料の負担は所得税に比べて大きい。 ③年金世帯の税と社会保険料負担は…

金融機関と信頼。

倫理や公正という概念は曖昧なもので、 一人ひとり、その基準は異なるのではないかと考えられます。今般の金融危機対応に限らず、 金融市場や金融機関に対する規制や公共政策が 保護主義の立場に立って過度の規制や 誤った規制を生み出してきた歴史がありま…

資本を保護せよ。

資本は、利潤を生み出す「元手」であり、無くならない限り再投資されて次々と新しい利潤をもたらしてくれます。 一方、同じ生産要素である「労働」は一日の仕事で疲れ果てても、食事をして休息して睡眠を取れば、再び活動できるようになります。第二次大戦後…

部分的な中立性に価値はあるか?

課税自体は民間から政府への所得移転に過ぎず、何ら新しい価値を生み出すものではありません。 課税による機会コストは、課税がなければ創出されていただろう付加価値を損なう逸失利益(超過負担)のことになります。租税原則「公平・中立・簡素」のうち、中…

消費税法文献・論文サーベイ(その1)

東海大学の西山由美教授は消費税に関する興味深い論文をたくさん執筆されています。 必読です。消費税の中長期的論点 : EU付加価値税からの示唆東海法学 39, 107-118, 2007消費課税における競争中立性--「ガストン・シュール事件」を素材として税法学 (540),…

外形標準課税と消費税の差異、税等価。

外形標準課税(法人事業税)と消費税は、地方税と国税という差異の他、税額計算過程にも大きな違いがあり、別々のものだと思われています。 もっとも大きな違いは、外形標準課税は資本金1億円超の大きい企業のみに課税される「直接税」であるのに対し、消費…

取引高税の興亡。

製造→卸売→小売と、商品が流通するたびに課税され、しかも今日の付加価値税(消費税)のように前段階税額控除がなく、課税が累積していく(tax on tax)、「取引高税」についてです。取引高税は、第一次世界大戦の戦費を賄うために創設され、欧州で広く使わ…

小売売上税の米国における普及要因。

取引のあらゆる段階に課税されるものの、前段階税額控除により課税が累積しない特徴を持つ付加価値税は、広く世界に普及しており、日本の消費税もその一種であります。 OECD諸国のうち、唯一の例外として全国(連邦)レベルで付加価値税の仕組みを採用し…

納税の法的義務とその帰着。

法人企業は、法律上の税支払い義務はあっても、最終的に負担する主体にはなり得ません。法人課税は、一般に生産要素(労働・資本・・)所有者あるいは生産物購入者(消費者など)へ税の転嫁をもたらすことになります。 どの主体により多くの税の負担が帰着す…

消費税は付加価値税ではない?

付加価値税は実は付加価値に対する税ではない、と。租税図書館にもないので、国会図書館へ依頼するか。うーむ手間がかかるなあ。中村一雄(1971),付加価値税の分析視点,神戸大學經濟學研究年報,18巻,pp.84-111しかし、1971年の論文ですよ。 他で引用され…

実感としての消費者課税と、実態としての企業課税。

消費税は、買い物をした消費者から、国に納付するまでの「預り金」的性格を持つ、と納税当局から説明されることもあります。 しかし、消費税法の条文では消費者から「税額相当」を必ず預かるものとする、とは規定されていませんし、企業会計上で「預り金」経…

払う時に課税する?

我が国の現行の所得税法は、一時的な所得などにも課税する「包括的所得概念」に立脚していると解説されています。*1包括的所得概念への経済学的な立場からの批判として、次のようなものがあげられます。 ①勤労所得への非中立性 ②貯蓄・投資への二重課税によ…

転嫁の周知と国民的理解。

「間接税」とは、立法者により転嫁が予定されている税金ではありますが、実際に転嫁を行えるかどうかは、取引における力関係によります。 主税局長・国税庁長官・大蔵事務次官を歴任した尾崎護氏も、売上税法案廃案後に書いたエッセイ風の「売上税独り語り」…

金融仲介業への付加価値税課税の可能性。(思考中)

銀行業に代表される金融仲介業が生み出す審査・モニタリング・金融サービスなどの付加価値は、「金利」の中におり込まれてしまい、明示されません。 そのため、GDPの計算においても測定されてきませんでした。日本における金融仲介業が生み出す「付加価値」…

銀行業と消費課税。(その3)

Taxation Of Financial Intermediation : Theory And Practice For Emerging Economiesこの文献中には、1995年〜96年に欧州の金融機関10社の協力で行われたTCA(税額計算勘定)付キャッシュ・フロー税のパイロットテストについて書かれているそうです。 …

ネットで無料で読める租税法論文。(海外編)

National Tax Journalは発刊後2年を経過したものは登録無しで全部、無料で読めるようです。有難や〜 Howell H. Zee,A New Approach to Taxing Financial Intermediation Services Under a Value–Added Tax,2005 金融機関に対するリバースチャージ法による付…